ので手に取りました。書評自体は”シュレディンガーの猫”に掲載されています。
私自身を申しますと
女ですので徴兵は回避、学歴は旧帝大はでておらず、階級は現在専業主婦。
事前の知識として 岡山にはナンバースクールがあったけれど、広島にはなかった というのは知っている。というくらいのものです。
この本も単に自らの家族を理解する(文末)のに読みました。
まず、軍隊、学歴、階級・・・と
読む者を厳しく選別し、また紛糾を呼びそうなテーマばかりが並び
またその著書が女性であり、専門分野はまた別、
だというのに信じがたい長さで列挙される参考文献に驚きます。
エリートたらんゆえに、優秀に命令に従う兵隊さんのための庶民教育とは逸脱し
弊衣破帽、リベラル、平等主義に陥る
学生たち。そのノブレスオブリージュwを欺瞞と攻撃する
陸軍からの目。
「犠牲的精神は、目標こそ違え学生よりもマルキシストにある」という指摘や
「生死よりもむしろ、軍隊生活における盗難などにてを染めることへの嫌悪感が、特攻などへ学生をかりたてた」
という指摘は、特攻学生礼賛などが目立つ最近の流れに対するおもしろい示唆だと思います。
光クラブ事件での彼に文学的素養はないというのもなるほどです。
民本主義者の吉野作造ですら、食い詰め者が余後犯罪をおかしては軍隊の名に傷がつくので
上流階級から士官は選ぶべきであるとしていたという話もビックリしました。
本書の舞台である大日本帝国の時代には、いずれも鬼籍に入っておりますが
父方の祖父は農家の四男だか五男で海軍兵学校に通っており、
母方の祖父は地主の家(グレートのつかないウェルス?)の三男坊。
東京の私大に上京しその後陸軍に入隊。
とナンバースクールを出る・・いえ「に入る」(本書で強調されていましたね)ような頭はもっていなかったようですが
本書の主人公達に近いライフスタイル・悲憤をあじわっていそうに思われます。
天覧試合にでるくらい学生相撲では強かったようですが、
そんな事もかえってからかいの種になっていそうな気がします。
なにぶん無口な人で、孫目線では何を考えていたのかまったくわかりませんでした。
余談ながら父方の祖父は兄弟二人がブラジル移民をする程度に貧乏な家(エクストラ ポバティ?)の生まれだったようですが
私が生まれた頃には市内の長者番付常連と裕福になっており、まさに
「上官殿、足を揉ませてください」的な要領のよさと、海軍ネットワークで交易をして階層上昇したようです。
どっちかというとKY気味な高学歴兵士をいじめる「ゾル」だったのかもしれませんね。
口癖は「バカは一生の不作。バカと貧乏はどうにもならん」でした。
本書でしばしばとりあげられていた
「真空地帯」「農民兵士の手紙」「機会不平等」
高見順の私小説、三島の「青の時代」なども全く読んでいないのでそのうち読んでみたいと思います。
また、大江健三郎と石原慎太郎(そして、江藤淳に浅利慶太!!)が以前は反安保で共闘していたというのも大変驚きました。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
学歴・階級・軍隊: 高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書 1955) 新書 – 2008/7/1
高田 里惠子
(著)
戦前の社会で、旧制高校から帝国大学へと進む学生たちは、将来を約束されたひと握りのエリートたちであった。彼らはある時期まで、軍隊経験をもつ時でさえ、低学歴者にはない優位を与えられた。それが、第二次大戦もたけなわとなる頃から、彼らも過酷な軍隊生活を送らざるを得ない情況となる。本書は、最も「貧乏クジ」を引いた学徒兵世代の恨みと諦めの声を蒐集し、世代と階級を巡る問題を照射するものである。
- ISBN-104121019555
- ISBN-13978-4121019554
- 出版社中央公論新社
- 発売日2008/7/1
- 言語日本語
- 本の長さ320ページ
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2008/7/1)
- 発売日 : 2008/7/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 320ページ
- ISBN-10 : 4121019555
- ISBN-13 : 978-4121019554
- Amazon 売れ筋ランキング: - 361,594位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2008年7月29日に日本でレビュー済み
最後の最後まで著者の本音はわかりませんね。余りにも距離のとり方と一見正直と思える反応そしてディテールへのこだわりが生む限りないテーマの拡散と逸脱が混在していてどこまでが本音で逆説なのかわからないのが著者の特徴です。実際、タイトルは「学歴・階級・軍隊」という仰々しいものですが、本書を貫くモティーフは曖昧なままです。それに対して、特筆すべきは、驚くべきほどのディテールへの執着とその豊潤さです。この学歴、軍隊そして階級にまつわるディテールの積み重ねにより、従来通説とされていたものが次々と容赦ないクリティークにさらされていきます。結果として浮かび上がるのは、驚くべき戦前の社会の断層と日本人の尽きることのないディテールへのこだわりです。これを著者は不幸の均「てん」(この漢字が出てきません)もしくは「犠牲の平等」とよんでいます。そう日本人はそんなに変わっていないのです。驚くべきほどの生(raw)の「個人主義」と小さな差別化へのこだわりこそが日本人を動かした源流なのでしょうか。結語として挙げられている「異質なものとの接触」は著者なりの若者へのメッセージなのでしょうが、取り上げられている題材は限りなくマニアックなものです。
2015年10月3日に日本でレビュー済み
超エリートの高学歴の学生は当初は徴兵制度の外側にいた
これは予備役少尉になることが名誉であったドイツとは大違いであったわけで
軍も国民の模範として入ってほしいので一生懸命勧誘や優遇策はやっていたわけだが
軍隊なにそれ状態のエリート層にはなかなか相手にしてもらえなかったようだ
しかも平時の徴兵検査で合格する大学生などさわやかスポーツマンばっかで
そういうのを集めて海外のスポーツをして愉しんでいただけって徴兵生活もあったのだという
つまりエリートはエリートで好き勝手やってるだけで社会からの信任はなく
信任がないゆえに責務もなく自由だったのであろうな
対して他の人にとってはエリート層ってのが嫉妬の的であり
赤紙が来て古参兵にどつかれる大学教授などメシウマ状態だったわけだな
その辺を考えればN速あたりは日本人の庶民的感情の結晶なのだろう
運の悪いエリートを引きずり下ろしてみんなで仲良く戦死させて平等というのは達成されたわけだ
まあ戦後の高度成長期はみんなだいたい戦前のエリート風って感じになったけど
その中で勉強しないゆとり学生に戦地で地獄を見た教官が切れるのだけど
学生からしたらそんなこと言われても困るというのがホンネで
これは予備役少尉になることが名誉であったドイツとは大違いであったわけで
軍も国民の模範として入ってほしいので一生懸命勧誘や優遇策はやっていたわけだが
軍隊なにそれ状態のエリート層にはなかなか相手にしてもらえなかったようだ
しかも平時の徴兵検査で合格する大学生などさわやかスポーツマンばっかで
そういうのを集めて海外のスポーツをして愉しんでいただけって徴兵生活もあったのだという
つまりエリートはエリートで好き勝手やってるだけで社会からの信任はなく
信任がないゆえに責務もなく自由だったのであろうな
対して他の人にとってはエリート層ってのが嫉妬の的であり
赤紙が来て古参兵にどつかれる大学教授などメシウマ状態だったわけだな
その辺を考えればN速あたりは日本人の庶民的感情の結晶なのだろう
運の悪いエリートを引きずり下ろしてみんなで仲良く戦死させて平等というのは達成されたわけだ
まあ戦後の高度成長期はみんなだいたい戦前のエリート風って感じになったけど
その中で勉強しないゆとり学生に戦地で地獄を見た教官が切れるのだけど
学生からしたらそんなこと言われても困るというのがホンネで
2009年1月18日に日本でレビュー済み
前著と同じく視点はよいが、基本エピソードをただだらだらと
紹介しただけになっている点が痛い。
前著でもそうだがあまりに強烈過ぎるルサンチマン・・・
まあそれが読ませる方向に行けばよいのだけど学術書でも
ない本書ではどうか。
もう少し書き方でなんとかならなかったものなのか
悔やまれる。
紹介しただけになっている点が痛い。
前著でもそうだがあまりに強烈過ぎるルサンチマン・・・
まあそれが読ませる方向に行けばよいのだけど学術書でも
ない本書ではどうか。
もう少し書き方でなんとかならなかったものなのか
悔やまれる。
2017年5月24日に日本でレビュー済み
学徒兵を扱った本だが、意外に深い。
この本を読むと、戦没学生の遺稿を集めた「きけわだつみのこえ」という本も所詮エリートの自己陶酔の本。
戦地の事は書かれていない。
真空地帯などで描かれた内務班での制裁、差別などに言及。
当時の学徒というのは、今と違って明らかに数の少ないエリート階層。こんな連中まで駆出さなければならなくなった日本という国の貧しさ。
学徒の話が中心なので下級将校、下士官、兵の話が主体。高級軍人達の官僚主義、エリート主義への言及はない。この点、本書は軍人組織のほんの一部についてしか論じていない。
明治神宮外苑の学徒出陣が有名だが、ここまでニッチもサッチもいかなくなってしまっていた日本、という受け止めは少ない。同様に、太平洋戦争が初戦から半年以降はほとんど一方的な負け戦さで、大人と子供の戦い、ヘビー級とフライ級若しくはモスキート級とのボクシングみたいなものだったという事実に触れる人も殆どいない。そういえば、昔、ロスで湾岸戦争のテレビを見て太平洋戦争もかくやと思った事を思い出した。
執拗に、一高、東大の内外をえがくことにより、彼らの心情世界を疑似体験し、垣間見ることができる。しかし、それは所詮仲間内のゴタクみたいなもので、他者にとってみれば嫌味であり、無関係、無関心なものにすぎない。
その様な心情と環境に囲まれて他の世界から隔絶された生活を行なっていれば、突如異質の世界へ放り込まれる事はまことに耐えがたい事ではあったろう。
これは戦時のほんの2年間弱の話にすぎない。今の北朝鮮人民の抑圧振りとは比較にならない。彼等は全世代にわたって、恐怖政治のもと服従と自己欺瞞の中で何年も何十年も過ごし、今後も過ごしていかねばならない。この苦痛と残酷さから見れば、わだつみの苦悩など何ということもないと言うべきだろう。
この本を読むと、戦没学生の遺稿を集めた「きけわだつみのこえ」という本も所詮エリートの自己陶酔の本。
戦地の事は書かれていない。
真空地帯などで描かれた内務班での制裁、差別などに言及。
当時の学徒というのは、今と違って明らかに数の少ないエリート階層。こんな連中まで駆出さなければならなくなった日本という国の貧しさ。
学徒の話が中心なので下級将校、下士官、兵の話が主体。高級軍人達の官僚主義、エリート主義への言及はない。この点、本書は軍人組織のほんの一部についてしか論じていない。
明治神宮外苑の学徒出陣が有名だが、ここまでニッチもサッチもいかなくなってしまっていた日本、という受け止めは少ない。同様に、太平洋戦争が初戦から半年以降はほとんど一方的な負け戦さで、大人と子供の戦い、ヘビー級とフライ級若しくはモスキート級とのボクシングみたいなものだったという事実に触れる人も殆どいない。そういえば、昔、ロスで湾岸戦争のテレビを見て太平洋戦争もかくやと思った事を思い出した。
執拗に、一高、東大の内外をえがくことにより、彼らの心情世界を疑似体験し、垣間見ることができる。しかし、それは所詮仲間内のゴタクみたいなもので、他者にとってみれば嫌味であり、無関係、無関心なものにすぎない。
その様な心情と環境に囲まれて他の世界から隔絶された生活を行なっていれば、突如異質の世界へ放り込まれる事はまことに耐えがたい事ではあったろう。
これは戦時のほんの2年間弱の話にすぎない。今の北朝鮮人民の抑圧振りとは比較にならない。彼等は全世代にわたって、恐怖政治のもと服従と自己欺瞞の中で何年も何十年も過ごし、今後も過ごしていかねばならない。この苦痛と残酷さから見れば、わだつみの苦悩など何ということもないと言うべきだろう。
2013年6月30日に日本でレビュー済み
・他者の引用が多い。(特にわだつみ)
・全体として散漫でとりとめがあるようでない。
・文章が達者。
・女性が男性社会のことを知ったような口ぶりで書いている。
あと、東大の自慢話はもういいから、って。
しかし、この本のおかげで、今の多くの国民の戦争願望=徴兵願望(憲法改正、国防軍の創設を訴える政治家への高支持率)がなんとなく透けて見えた。
既得権に護られて「うまいことやってる奴ら」をガツンと懲らしめてやりたいんですよね。おそらく。
本書は学歴に特化して書かれているけれど、本当はもっと普遍的な問題である気がする。
徴兵逃れのために電柱につかまって泣き叫ぶ素封家の息子を銃殺する挿話などはまさにそれかも。
・全体として散漫でとりとめがあるようでない。
・文章が達者。
・女性が男性社会のことを知ったような口ぶりで書いている。
あと、東大の自慢話はもういいから、って。
しかし、この本のおかげで、今の多くの国民の戦争願望=徴兵願望(憲法改正、国防軍の創設を訴える政治家への高支持率)がなんとなく透けて見えた。
既得権に護られて「うまいことやってる奴ら」をガツンと懲らしめてやりたいんですよね。おそらく。
本書は学歴に特化して書かれているけれど、本当はもっと普遍的な問題である気がする。
徴兵逃れのために電柱につかまって泣き叫ぶ素封家の息子を銃殺する挿話などはまさにそれかも。
2008年9月9日に日本でレビュー済み
下駄をならして奴がくる 腰に手ぬぐいぶら下げて
学生服にしみこんだ 男の臭いがやってくる
と、かまやつひろしが「我が良き友よ」で歌ったように、旧制高校は浪漫とノスタルジーの対象となってきた。その憧れの視線は、例えば木原敏江が 摩利と新吾―ヴェッテンベルク・バンカランゲン (第1巻) (白泉社文庫) で描いたように、少女漫画にまでも浸透している。
このように戦後日本人からある種のユートピアとして概念されている「旧制高校」の最後の世代を、様々な視点から描いたのが本書である。
しかし「最後の旧制高校世代」はすなわち、学徒動員世代であり、それまでの旧制高校出身者と比べると圧倒的な「貧乏くじ」世代であった。軍隊に放り込まれ、出身階層の異なる兵隊の間で辛酸を舐め尽くす。「きけわだつみのこえ」の特攻隊に志願した世代でもあった。そのような経験を経て「生き残ってしまった」世代がニヒリズムと享楽に走るのも無理のないことである。「二十歳ニシテ心朽チタリ」と嘆ずるのも当然であろう。
本書は、該博な資料を駆使して、この徹底して「貧乏くじ」を引いた高学歴ロストジェネレーションをあらゆる角度から描き出している。
そのことは、評者には「鎮魂歌」として感じられた。
「故人のことを思い出し、偲ぶ」ことこそ、もっとも誠実な鎮魂の行為に他ならないからである。
学生服にしみこんだ 男の臭いがやってくる
と、かまやつひろしが「我が良き友よ」で歌ったように、旧制高校は浪漫とノスタルジーの対象となってきた。その憧れの視線は、例えば木原敏江が 摩利と新吾―ヴェッテンベルク・バンカランゲン (第1巻) (白泉社文庫) で描いたように、少女漫画にまでも浸透している。
このように戦後日本人からある種のユートピアとして概念されている「旧制高校」の最後の世代を、様々な視点から描いたのが本書である。
しかし「最後の旧制高校世代」はすなわち、学徒動員世代であり、それまでの旧制高校出身者と比べると圧倒的な「貧乏くじ」世代であった。軍隊に放り込まれ、出身階層の異なる兵隊の間で辛酸を舐め尽くす。「きけわだつみのこえ」の特攻隊に志願した世代でもあった。そのような経験を経て「生き残ってしまった」世代がニヒリズムと享楽に走るのも無理のないことである。「二十歳ニシテ心朽チタリ」と嘆ずるのも当然であろう。
本書は、該博な資料を駆使して、この徹底して「貧乏くじ」を引いた高学歴ロストジェネレーションをあらゆる角度から描き出している。
そのことは、評者には「鎮魂歌」として感じられた。
「故人のことを思い出し、偲ぶ」ことこそ、もっとも誠実な鎮魂の行為に他ならないからである。